決め球はマリンボール〜幕張の守護神(太作) ブオン! 「なめてもらっちゃ困るよ。ボクだって、甲子園のマウンドに登ったことはあるんだ」 「く・・・そっ!」 また一人、ボクに惑わされ、空振り、散ってゆく。 「城島さん、相変わらず凄いです。女だからってなめないほうがいいですよ」 「松中、ウソだろ?確かに女のわりにやるとは思ってたが、俺はやられねえぜ」 そしてまた、命知らずがボックスに立つ。調子の良い今のボクから打てるわけ無いのにな・・・。 そしてボールは地面すれすれ、10センチも無いであろうところから繰り出される。 高め直球を空振らせる。サブマリンからの高めは怖いよ。 今度は低めにカーブ。ストライクゾーンギリギリ、見送る。ストライク。 外角高め、ボールゾーンにはずして第4球。 当然、アレでいく。キャッチャーとも意見が合う。 体が沈み、腕は地面ギリギリを通り、リリースの瞬間手首を捻る。 放たれたボールはど真ん中へ。案の条、真ん中を振りにいく。 無理も無いよ。アレだけ改良したHシンカーだ。 直球かと錯覚する打者はたくさんいる。 いけぇ!心の中で叫ぶ。そしてボールは沈んでいく。 ブオン! ホームベース後方でワンバウンド。一応取ってくれた。バッターアウト、ゲームセット。あー、早く帰って寝よ。 『決め球はマリンボール』〜幕張の守護神〜 いまさらながら自己紹介。 ボクの名は早川あおい。千葉ロッテマリーンズの守護神だ。 え、何?自分で言うな?いいでしょ!テレビでいっつも守護神守護神言われるんだから! いい加減にしないと殴るよもう! 上にも出てるでしょ!まったく! 早川あおい、と聞いたらまず思い浮かべるのはやっぱり「アンダースロー」だよね。 そうでもない?なんですって?(にっこり) とにかく、このアンダーは、ボクの生き残り作戦なんだ。 当然ボクは力では劣る。 え?その腕力はどうした?何のことかな?(にっこり) だから技で行こうということでアンダーになったんだ。 恋恋で出場停止になり、なめられ、バカにされ、と大変だった。 だから高野連と、なめ、馬鹿にしたやつらを見返すためのサブマリンなんだ。 そのおかげでロッテで1位指名を受けることができた。 何?さっきバカにされてた?それはあいつらがバカなの! 今度は何?脅して1位指名をさせたんじゃないのか? スクランブルにしてあげようか?お墓の下に行きたい?(にっこり) あ!もう11時じゃない!もう!アンタがくだらないこと言うから! もう電気消すよ! 同率3位にいるファイターズとの試合。ここを勝ち越したほうがプレーオフ進出が有利になる。 偶然にも両エースが登板する。清水さんは速球派だからボクが登板すれば球速差が大きくなって有効だ。 両投手投げ合いとなり、延長に突入するかと思いきや、7回李承樺がまさかのグランドスラム。 試合が決まったかと思いきややっぱりSHINJOさん。 その裏、ノーアウトからファイターズビッグバン打線が爆発し、4-2とした後。 SHINJOさんが右中間を大きく抜き三塁打。 ・・・かと思いきや暴走。ホームへ。フランコさんが渾身のバックホーム。 ゆうゆうとアウトかと思ったらSHINJOがキャッチャー橋本さんを飛び越えようとする。 タッチ成功、アウトだったんだけどタッチの際に後ろにバランスを崩す。 ボールを落としセーフ。あの人もよくやるね。 ブルペンで見ていた僕はピキーンときた。ブルペンの戸を勢い良く開け、前に進む。 すると。 ゴン! 「「いだっ!」」 呼びに来たコーチと頭をぶつける。 ・・・気絶してる。いいや、行こう(笑) 8回は特に何も無く抑えてやったので省略。 表のウチの攻撃もたいしたこと無かったので省略。 ってことで9回ウラ。 打順は9番。・・・やば!SHINJOさんと当たる!あの人嫌だよ〜。 あーもう早く終わらせよ。初球は直球インハイ。見送りストライク。 これで終わらせなきゃヤバイ。引っ掛けさせる。 アウトローにカーブ。・・・良かった。ショートゴロ。 次は1番。次はSHINJOさんか。やだなー。あの人(ミート以外)すっごいからなあ。全部。 (とっとと終わらせる!) インローにストレート。よし。セカンドゴロ。やった!坪井さん抑えた! これで喜んでられない。ついに、SHINJOさんだ。 初球カーブ。空振り。次もカーブ。空振り。 追い込んだ。1球外そう。外角低目。力を込めれば空振るかも。 投げてみた。 カン! (えっ?) 「ファール!」 (う、嘘!SHINJOさんがあれを振って当てた、ですって!) (あっぶね〜!あのヤローなめらんねーな!) さすがはメジャーで鍛えた選手だ。 肩が震える。 「タイム!」 橋本さんがタイムをかけた。 「どうした?早川、震えてるぞ」 「いやー、SHINJOさんがあそこまでやるとは思えなくて・・・」 「敬遠するか?」 「ははっ、ボクがここで逃げるおと・・・じゃなくて女だと思ってるんですか?  ボクはここまで諦めないで向かっていって撃沈する女ですよ」 「ダメじゃん」 「とにかくここは抑えます。ここから全球マリンボールです!」 「プレイ!」 「らあああっ!」 シュルルルルッ! 「だあっ!」 カキッ! ((なっ!マリンボールが当てられた・・・!)) それでも決めたんだ。 マリンでいく。 絶対に勝つ! 「うおおおおおおお!」 体を思いっきり沈ませる! 思いっきり3塁方向に手首を回す! ボールを放つ! ボールはホームベース手前でSHINJOの立つ右方向に曲がる! インローを突くボールと黒と赤のバットとがぶつかろうとする! そして! ブオオオン! ボールはバットをすり抜ける! 取った橋本さんはミットの左手を、ボクは右手を天へ突き上げる! 「ストライーク!バッターアウト!ゲームセット!」 「本日のヒーローは早川あおい選手でーす!」 「なぜ?勝利投手の清水さんだと思ったのに」 「チームの危機を救ったからですよ、早川選手」 「なるほど」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「さて、最後です。今後、あなたの何がチームを優勝に導くでしょう」 「やはり、決め球ですね」 「というと、アレですか」 「はい、毎年言ってますね。  ボクの決め球はマリンボール!皆様よろしくお願いします!」 「今年は去年より多く聞きましたね。  本日のヒーローは早川あおい選手でしたー!」 野球ファンに「マリンボール」を広められたかな。 もっとメジャーな球にしていくよ! P,S 3年後、「マリンボール」は流行語大賞を取ったとさ。 「そんなバカな」 おわり