Mr Pinch hitter (りょうた作) 2021年9月17日 沖縄ボールパーク内室内練習場 ここでボクこと斉藤悠が素振りしていた。 「ふう、ボクも今日で引退か・・・・・・・・。」 「斉藤さん、最後の出番ですよ。」 「ああ、分かってる。」 「Mr.Pinch hitter。頑張って。」 「ああ。」 「ピッチャー山田に変わりまして、ピンチヒッター、斉藤。」 「ワー」 と言う大歓声が聞こえた。無性に涙が出てきた。 早速だが、ボクは今日、23年の現役生活を終える。 もう何も悔いに残らない。 さっきチームメイトがMr.Pinch hitterと言ったがそれはこの後の話を聞いてくれると良いと思う。 プロ入りしたときにボクはピッチャーだった。しかし肘を痛めて投げることができなくなってしまい、野手に転向した。 野手に転向してすぐ、ボクはある男と友達になった。 その男の名は「真田球太郎」という。 右のサイドスローからカーブやシンカー、シュートなどを投げる技巧派ピッチャーだ。 球太郎は・・・・・・・・・・・・ 「投手ができなくても野球はできるよ。だからお前も野手に転向したんだろ。」 それからボクは毎朝1000本素振りをし、打力向上を試みた。 ファームではエースが球太郎で、四番がボクだった。 そして四年目、ボクは開幕一軍に選ばれた。 ボクは監督から代打で使うと言われた。 そして早速起用された。 そして・・・・・・・・ 「カキーンッ」「ワー」 何と試合を決める特大ホームラン! それからボクはMr.Pinch hitterと呼ばれるようになった。 え、何?ボクが引退した理由? ボクが引退を決意した理由は二つある。 一つはもう歳だと言うこと。 もう一つは・・・・・・・・・・・・・・・・ ボクの死んだ母、死んだ妻と息子が夢に出てきたのだ。 母は病気で、妻と息子は事故でなくしてしまった。 母は・・・・・・・・・・・・・・・・ 「もう、歳だしそろそろ休んだら?」 と言う母親らしき発言。 妻と息子は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「そろそろ退いて実況にもなったら?」 と言う楽観的な発言だった。 球太郎はこの事で 「今までお疲れさん。良くここまで頑張ったな。明日もしかして最後の対戦になるかもしれないから宜しく。」 だと。 球太郎はスピヤーズからフェニックスにトレードされた。 10年も前だけど。 そろそろ回想から戻そう。 「ピッチャー木田に代わりまして、真田。ピッチャー真田球太郎、背番号17。」 まさか最後に球太郎と対戦するとは思わなかった。 ボクと球太郎の対戦打率は23年の現役(高卒なので41歳。)の中で僅か一割。と言うよりも彼はスピヤーズキラーだった。 「まさか、最後に三振か〜、困ったな〜」 第一球:「ストライーク」 内角に得意球のシュート。 第二球:「ストライーク!」 カーブを投げてきた。これで追い込まれた。 第三球:「カキーンッ」「ファール!」 打球はレフトへぐんぐん伸びる、しかし僅かに切れてファール。 第四球:「ボール!」 第五球:「ボール!」 第六球:「ファール!」 第七球:「ファール!」 第八球:「ボール!」 内角に得意球のシュート。もう少しでデットボールになるところだった。 これでフルカウント。 ボク「最後くらい、ど真ん中に投げてくれるよなぁ?」 球太郎「分かったよ。最後くらい。」 第九球、威力のあるストレートそして・・・・・・・ 「カキーンッ」 打ったー!打球はレフトへぐんぐん伸びる伸びる入るか!? 「ガッシャーン」 入った。現役最後の打席でホームランを打ってしまった。 ボクは大歓声の中、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。 「ワーワー!悠ー!」 観客席からは敵軍ファンも自軍ファンも拍手と悠コールが聞こえた。 記者が言う。 「放送席ー、放送席ー、今日のヒーローは、昨日引退表明をした沖縄スピヤーズの斉藤悠選手です!」 「ワーッ」 「凄いですねー、最後にホームランそれもプロ入りの時からの親友である真田球太郎選手から打つなんて。やはりMr.Pinch hitterとしての意地でしょうか?」 「いえ、今までのがんばりの結果だと思います。」 「今日は誰に感謝しますか?」 「今日試合に出してくれた監督に感謝感激です。」 「今日でお立ち台に立つのも最後ですがファンの人たちに何か言いたいですか?」 「皆さん、斉藤悠は今日で引退しますが、皆さんの心の中で打ちたいです。宜しくお願いします!」 この後ボクは大量の大粒の涙を流した。 その後ボクは球太郎とご飯を食った。その時にこんな話をした。 球太郎「お前もやるなー俺もそろそろこういうのになっちまうのかなー?」 悠「その時には頼んで始球式に出てやるよ。」 球太郎「・・・・・・・・いらない。」