迷バッテリー物語2(りょうた作) 五年後 どうも渉です。 四年前に俺は甲子園でベスト4入りをし、ドラフト6位(いわゆる最下位だが)でスピヤーズに指名された。 今俺はスピヤーズの二番手捕手。次期正捕手候補だ。 最近はスタメンでのゲーム出場も多くなったんだ。と言っても今の正捕手の伊達アニキ(俊弥)がけがで欠場したときだが。 一昨年は16本塁打、去年は17本塁打を放った。今年は20本の大台に乗せたいところだ。 え、今何している?つーかどこいるのだって? 今、俺は佑介と一緒にグアムで自主トレをしている。 佑介はDスクリューや、速球を武器に活躍し、その素質が認められ、ドラフト1位でデビルバッツに入団した。 今はチームが違うことからバッテリーを組むことはない。でもオールスターでは同じリーグなので組むこともある(伊達アニキが出場を辞退したときにでた。) そろそろ会話に移ろう。 俺「佑介ー。キャッチボールしよー。」 キャッチボールはトレーニングを始める前に必ずやる日課だ。 佑介「ああ、いいよ。」 ポンポン投げ合っていると佑介が話し掛けた。 佑介「お前ってさー。まだ結婚しねーのー?」 俺「いや、したいけどさー。お前みたいに俺はモテないんだよー。」 佑介「そ、そうか・・・・・。」 佑介は実力だけじゃなく甘いマスクを持っていてるので女性にも人気が高かった。 そして去年、女子アナと結婚した。 佑介「でも渉結構モテそうじゃないのかなぁ?」 俺「冗談はよせやい。モテたとしても沖縄の娘だけだっつーの。お前は大阪だけじゃなくて東京の娘にも人気があったろ。」 佑介「まあまあ。あ、そうだ今度亜紀に頼んで紹介させてやるよ。」 亜紀とは佑介の奥さん、女子アナの人だ。何度か俺も一緒に食事したり、泊まらせてくれたりしたことがある。でもってスタイル抜群性格は最高に良い。 俺「そうしてくれるとうれしいってちょっとマテよ。」 佑介「楽しみにしてろよ。」 俺「この野郎〜。」 そして練習も終わり、眠ることにした。 数日後・・・・・・・ 佑介が紹介するっていうのを俺はすっかり忘れていた。 「ピロロンロン」 と、携帯の着信音が鳴る。どうやら佑介からのメールだ。 「明日からスピヤーズとデビルバッツとのオープン戦があるけど、その日の昼ぐらい一緒に食事しよう。あと、こないだ言っていた紹介するって言う女子アナも来るから。亜紀も来るんで。ヨロピク☆ P.Sちゃんとした服を着た方が良いよ。」 「おいおい。アイツ本当にやりやがった。でも何でちゃんとした服を着なくちゃ行けないんだ?」 次の日・・・・・・。 試合はよるからなので十分時間がある。そして俺は約束の時間にその食べるお店にやってきた。 そのお店というのがフランス料理でどうやらミシュランから三つ星をもらっているところだという。 なるほど、ちゃんとした服を着なくちゃ行けないわけはこれだな。 「いくらここが安いめし屋がいっぱいある大阪とはいえ高そうだな・・・・・。」 佑介がやってきた。 「あ、ごめん待った?」 「おいおい、何でまたこんな高そうな店なんだよ・・・・・。」 「まあ、いいじゃないの。」 「おいおい・・・・・・・。」 亜紀さんが言う。 「あ、川口君〜。じゃ紹介するね。同じ局の後輩でNo.1女子アナの小早川沙希さん。」 沙希「初めまして小早川沙希ですよろしくお願いします。」 俺「あ、川口渉ですよろしく。」 ウホ、か、かわいい。 いやかわいいと言うよりも綺麗といった方が良いのかもしれない。 佑介が・・・・・ 「じゃ食べましょうか。」 と言った。俺や佑介、亜紀さんや沙希さんはみんなフルコース。 フランスならではの食材、ワインetc・・・ 店員「お支払いは五万四千円になります。」 佑介「じゃあこれは渉、おごってくれ。」 俺「ぇ。」 俺「佑介、ちょっと耳貨して。」 俺「何で俺が払うんだよ〜。」 佑介「お前は沙希さんタイプか?」 俺「ぇ、まあ、そうだけど。」 佑介「そこで沙希さんに良いところを見せるんだ。」 俺「なるほどお前は俺のためにそうしているのか、ありがと。」 でもって財布の中は・・・・・ひぃふぅみぃ、なんと「十万円」ラッキー! そして・・・・・・ 沙希「川口さん、どうも有難う御座いました。私たちちょうど給料日前なので。」 俺「いえいえそんなこと無いですよ。俺もひょっとしたらないんじゃないかと思いましたもん。」 沙希「また今度一緒に食事しましょうよ。」 俺「そうですね。じゃあ電話番号教えてくれますか?」 亜紀&佑介「二人ともうまくいってる。」 俺はその時彼女がかけがえのない存在になることをもちろん知らなかった。もちろん沙希さんも知ることもなかった。 「人生の崖っぷち」 まさに俺はそこにいるかもしれない。 その崖っぷちに立ってしまった日 2005年の四月二日のシーズン第二戦。俺はスタメン出場した。投げるピッチャーはスピヤーズ右のエース吉岡さんだ。 九回までは好投したのだが、その九回にピンチを迎える。 2四球、1ボークをして満塁。 バッターは四番打者。 第一球:「カキーンッ」 打ったーここはセンターの俊平が捕ってアウトすぐに本塁に返球。 ランナーは返球と一緒につっこんできた。 「ドカッ」「ぐわぁーーーーー!!!痛ってーーーーーーー!!!」 ランナーは俺に思いっきりぶつかってきた。 そして・・・・・・ここは近くの病院。 佑介「おーい渉ー、起きろー、起きろってばー。」 俺「ここは?」 佑介「ここは病院だよ。」 俺「あ、本当だ。でもいけない、早く試合を。」 佑介「渉。動いちゃ・・」 ズキッ 俺「あいたたたたたた。」 佑介「ほれみろ。言わんこっちゃない。」 ドクター「気が付きましたか。手術は成功しましたか。」 俺「手術をするほど深刻なケガですか?」 ドクター「深刻と言えば深刻です。あなたは靱帯を切ってしまった。」 俺「え・・・・・・・・・・・・・・・・。」 ドクター「驚くのも無理はない。たぶんリハビリを含めて一年ぐらいは時間を食ってしまうかもしれない。」 俺「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 佑介「・・・・・・・・多分明日お前新聞でるよ。」 俺「『二戦目で戦線離脱』と出るだろうな。」 次の日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『スピヤーズの川口捕手が二戦目で戦線離脱』 『スピヤーズの”ワタル”こと川口渉、二戦目で戦線離脱』 『一年間を棒にふっちまった”ワタル”』 「やっぱりな・・・・・・・・・・・・・・・・。」 コンコン 俺「あ、はいっどうぞ。」 沙希「失礼しまーす。」 俺「あ、沙希さん。」 沙希「大丈夫ですかぁ〜?」 俺「正直言って大丈夫じゃないです。」 沙希「やっぱり・・・・・・・・・・・。」 俺「そんな気遣わなくても良いですよ。」 沙希「いやいやそう言われても気遣います。」 俺「?」 沙希さんは俺の退屈しのぎとしていろいろな話をしたり色々周りのことで気遣ってくれた。 俺は彼女への気持ちを抑えられなかった。 「好き」、という気持ちが抑えられなかった。  「好きです。付き合ってください。」 これが言えないのである。 でもいつかは言わなくちゃ、言わなくちゃ行けない。 彼女の気持ちは定かではないが今度この気持ちを伝えてみようと思った。 そして・・・・・・・・ コンコン 俺「どうぞ〜。」 沙希「こんにちわ〜。」 俺「こんにちわ、沙希さん。」 俺「あの沙希さん。」 沙希「何ですか?」 俺「あの何というか、その・・・・・・・・。」 鏡で見たわけではないが自分の頬が火照っていることがよく分かった。 俺「・・・・・・・・俺、沙希さんのことが好きです。」 沙希「ぇ、本当ですかそれ?冗談じゃないですよね。」 俺「冗談ではありません。沙希さんのこと心から、世界で一番愛してます。付き合ってください。」 沙希「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私で良ければ大歓迎ですよ。渉さん。」 俺「沙希さん有難う。」 この後沙希さんは俺のこと、真剣に愛してくれた。俺もそれに応えようとリハビリを続けた。 2005年のオフ、こんな記事を見かけた。 「スピヤーズの川口渉、2006年もだめなら解雇にする。」 と言う記事。 スピヤーズの編成部長が言っていた話で、 「2006年から大リーグ入りする伊達の代わりは川口ではなく二年目の国元だ。2006年も川口がだめなら解雇する。」 「よし、やったろうじゃねえの・・・・・・。クビになんてさせねぇ。3割30本ぐらい打ってやろうか・・・・。二年目の奴に正捕手の座なんか渡してやるもんか・・・・・・・・。」 あれから二ヶ月後。俺は佑介とまた自主トレを開始した。 そして日課であるキャッチボールをしながら佑介が話し掛けた。 佑介「ケガの方はどう?」 俺「すっかり良くなった。今はデーピングを貼ってるだけ。」 佑介「まだ痛むか?」 俺「痛いよ。デーピングの形、ちょっと特殊だろ。」 佑介「ふぅ〜ん。あ、なあ今度のシーズン目標はなんだい?」 俺「え、あぁそれは3割30本とあと・・「沙希さんとの結婚だろ。」 俺「馬鹿、早いつーの。」 佑介「まあ、頑張れ。」 俺「おいおい。」 開幕目前の時、俺は監督に監督室に来るよう言われた。 ノブを回し、監督室に入った。監督は椅子に腰掛けていた。 こっちがぼさっと立っているわけにも行かず取りあえず座った。 「川口、最近頑張ってるな。」 「そ、そうですか?」 「だってお前は朝、一番早く来て練習を始めて夜遅くも練習しているからな。それにオープン戦でも活躍してるじゃないか。」 オープン戦では.299、16安打、30打点、7本塁打とまずまずの成績だった。 「ここで頑張らないといけない、と言うよりもヤバイですからね。」 「そんなお前に言いたいことは一つ、開幕一軍頼む。」 「ぇ、本当ですか?」 「本当だ。お前には正捕手として頑張ってもらいたい。」 そして開幕。 「五番キャッチャー川口。」 遂に復帰第一戦の初打席だ。 ランナーは三塁にいる絶好のチャンス。 第一球:「ストライーク!」 外角に決まった。 第二球:「カキーンッ」「ワーッ」 打ったー打球はレフトのフェンス直撃〜!ランナーはもちろん生還! 復帰後の初安打はタイムリーツーベースだった。そして復帰後初打点も記録した。 二打席目 第一球:「カキーンッ」 「パシッ」「アウト」 打球はセンターフライだった。 三打席目 第一球:「ストライーク!」 第二球:「ストライクツー!」 第三球:「カキーンッ」 ライト前へ単打。しかし得点につなげることはなかった。 四打席目 それまでに他のチームメイトが 「カキーンッ」「キンッ」 と言う感じで連打を重ね、何と満塁になった。 そんな場面で打席は俺になる。 第一球:「ストライーク!」 第二球:「ストライクツー!」 第三球:「ボール!」 第四球:「ボール!」 第五球:「カキーンッ」「ファール!」 第六球:「ボール!」 第七球:「カキーンッ」 打ったー打球は延びる延びる入るか!? 「ガシャーン」 レフトポール直撃〜。 そう、復帰後初ホームランを打ってしまったのだ。 チームメイトが言ってくる、 「ほら、お立ち台にいきなよ。」 「あっそうか、お立ち台に立てるんだ!やったー。」 記者が言う。 「放送席ー、放送席ー、今日のヒーローは、大けがから復帰の川口渉選手です!」 「ワーッ」 「凄いですねー、復帰初試合初ヒット初打点初ホームランなんて、生え抜き選手の意地ですか?」 「いえ、今までのがんばりの結果だと思います。」 「今日は誰に感謝しますか?」 「今日試合に出してくれた監督に感謝感激です。」 「まだペナントレースは始まったばかりです、今年は何を目指しますか?」 「ホームラン王ですね、それと打率3割を目指したいです。」 「今日のヒーロー川口渉選手でした!」 「有難う御座います!」 あれから数ヶ月。 俺は開幕戦でのヒーローインタビューで言ったように、50本を打ち、ホームラン王、そして打率3割を挙げた。と言うよりも、首位打者や打点王を挙げ、何と三冠王になってしまった。 そしてこんな記事が載った。 「スピヤーズ編成部長”川口はクビにしない”」 俺はこの時「よっしゃー!」と叫んでしまった。 オフ。俺は沙希さんを呼んだ。 今日こそプロポーズを言おうと思った。 沙希「どうしたの?渉さん。」 俺「いや、たいしたことじゃないんだけど・・・・・・・。」 沙希「?」 俺「沙希さん俺、沙希さんと結婚したいんだ。」 沙希「えぇ〜!?」 凄く驚いていた。俺たちには早いかなぁ? 俺「俺たちには早いかなぁ。」 沙希「そんなことないよ!ただ・・・・」 俺「ただ?」 沙希「私なんかで十分なの?。」 俺「十分だよ!と言うか俺、沙希さんを守りたいんだ。ずっと一緒にいたいんだ!」 沙希「・・・・・・・・こんな私で良ければ大歓迎。どこまでもついて行きます。」 俺「沙希さん!」 俺は沙希さんを抱きしめた。俺は遂に沙希さんと結ばれたのだった。 迷バッテリー物語、完(多分)