迷バッテリー物語:りょうた作 「おーいわーたるー。キャッチボールしよーぜー。」 アイツが呼んでいる。 「おい待てよ、今用意するから。」 俺の名は川口渉。アイツの名前は柴田佑介。赤ん坊の頃からの友達だ。 時は1999年。俺はまもなく高校最後の夏を迎えようとしていた。 自分の通っている高校は県大会一戦目二戦目で負けるような弱いところ。 甲子園が夢のまた夢なのに、佑介はまだプロに憧れていた。 何でもスピヤーズに入った春日祐樹選手が弱い学校のチームを一人で背負い、春夏連覇したからだとか。 俺もそんな時期はあったけどもうあきらめている。 「おーい早くしろよ!」 あ、呼んでいるから話に移るよ。 「なぁ佑介、いい加減にあきらめたらどうだ?お前は確かにコントロールも良いしスタミナもあるしスピードもある。それにサウスポーだ。でも甲子園出てないんだぜ、諦めろよ。」 「分かってねーなーお前は、出られなければ大学行ったり社会人経由したりって言う方法があるじゃないか。」 「分かった分かった。じゃあ受けますか。」 「OK!」 俺はマスク、ミット、レガース、プロテクターを着けた。 「よしまずカッターをインハイに。」 「シュッパシッ」 「じゃつぎアウトローにサークルチェンジ。」 「シュッパシッ」 そして・・・・・ 「仕上げにど真ん中に直球な。」 「シュッパシーッ」 「くーっはぇーなー。」 「俺は何よりも直球が武器だぜ。」 「ああ、そうだな。じゃあそろそろ帰りますか。」 そして二人は共に家路についた。 あ、因みに俺たちが通っている高校は「浅元高校」と言うんだ。 ま、どうでもいいか。 今日は県大会決勝。 何でもう決勝まで来ているんだっと疑問に思う人に教えます。 第一戦は自分の学校より弱い所と当たり、10−0とコールド勝ち。 第二戦は甲子園出場経験のある高校と当たったが、佑介が18奪三振を討ち取って快勝。 第三戦は打撃戦となり11−10で何とか勝った。 第四戦は・・・・・もう話すと切りがなるからとにかく今年はなんか快進撃でここまで来たのだ。そろそろ試合に移ろう。 浅元高校VS大島高校 大島高校は去年甲子園に出場しベスト4にまで来た強豪だ。 そして・・・・・・・・・・・ 「プレイボール!」 「一番ショート西川君。」 軽く二回素振りしてやってきた。 「まずはカーブ、二球目ストレート三球目サークルチェンジかなぁ?」 そして俺はやはりカーブのサインを出した。 「シュッ」「カキーンッ」 「ぇ。なんで?」「ガシャーン」 打球は見事にレフトポールに突き刺さった。 審判はぶるんぶるんと手を回す。 「そんなのありかよー。」 とちょっとキレ気味の佑介。 「タイム。」 と言って間合いを取る。 「予想が外れたみたいだ。ごめん。」 「まあ、さっきのカーブすっぽ抜けてたしな。お前が謝らなくても良いよ。」」 「仕方ない。ここは冷静になんとかアウトを取りますか。」 そうして冷静になってみたら、簡単に三振、ゴロ、フライにしとめることが出来た。 一方打つ方は・・・・・・ 「ガキッ」「アウト!」 「カキーン」「パシッ」「アウト!」 「シュッ」「パシッ」「ストライク!バッターアウト!」 そんなこんだでこの後は一歩も引かず九回になってしまった。 そして早くもツーアウト。 「三番キャッチャー川口君」 「あ、俺か。」「ちゃんと打てよー。」「ああ、分かってる。」 と言ってもここまでの打席はみんな三振。打てるとは思えなかった。 第一球:「ストライーク!」 第二球:「ストライーク!ツー!」 やはりここでも三振かなぁ? 第三球:「カキーンッ」 打ったー!打球は延びる延びる!どうだ!? 「ガシャーンッ」 ホームラン!でじゃなくて、フェンス直撃の三塁打となった。 「四番ファースト花川君」 絶対行ける!ホームに行ける! 第一球:「カキーンッ」 いきなり打ったーがしかし「パシッ」「アウト!」 でもタッチアップなら行ける! シュタタタタタ、その間にボールはホームへ「やばい!」 「ドカッ」俺は相手チームのキャッチャーにぶつかった。判定は!? 「セーフセーフ!」 「よっしゃー!」 と喜ぶ俺たち。 「五番ピッチャー柴田君」 「佑介。」「なに?」「フルスイング、フルスイング。」「OK。」 「よっしゃ一発決めたるでー!」「おい。」 そしてアイツは打席に向かった。 それはあっけなく始まった。 第一球:「ボール!」 第二球:「ボールツー!」 第三球:「ストライク!」 第四球:「ボールスリー!」 第五球:「ストライクツー!」 あ、フルカウントじゃん。 第五球:「カキーン」「ファール!」 第六球:「ファール!」 第七球:「カキーン!」 打ったー!打球は延びる延びるどうだ!? 「ファール!」 第八球:「カキーン!」 またまた打ったーどうだ!? 「ガシャーンッ」 「よっしゃー!」 そうアイツはホームランを打ったのだ! 「やったー!」「甲子園だ!」「よっしゃー!」 その時浅元高ナインは歓喜の輪に包まれたのだった。 夏、ここは兵庫県西宮市にある甲子園球場。 高校球児なら一度でも良いから行きたいと思う場所だ。 そこに俺たちがこの俺たちがいる。 弱小高校浅元高校がここにいる! 浅元高校VS勝央(しょうおう)学院 勝央学院とは最近かなり強くなり、ここ五年間では春夏すべてに出場している。 エースの田島稔はMAX156`の剛速球、切れ味のよいカットボール、殆ど無回転のフォーク通称落ちナックルが武器。 四番打者の浅井剛は上手く芯にさえ当たれば殆どがホームラン。高校通算80本の怪力の持ち主だ。 どちらもプロ入りが期待されている。 このような選手が何人もいる恐怖の高校なのだ。 浅元ナイン側 部員A「ぇ、いきなりですか?」 部員B「無理だよ。勝てるわけがないよ。」 渉「おいおい、もしかしたら勝てるかもしれないだろ(といっても正直無理だな。)」 佑介「そうだ。渉の言うとうりだ。みんな頑張るぞ!」 一同「オウッ!」 勝央ナイン側 部員A「なんだ?勝てるわけないのに妙に意気込んでるぞ。」 部員B「ぜってー勝てるわけないのにさ。」 監督「こら、おめえらそんなこというならスタメンに入れさせねーぞ、こら。」 部員AとB「は、はい分かりました。」 田島「そうだよ、もしかして以外に負けるかもしれないからね。(たぶん、いや絶対勝つな。)」 浅井「言えてる言えてる。」 「わーたるー。」 「何?」 「なあ、ちょっと受けてみない?」 「ああ、良いけど。」 「あのさ、俺、154`のストレートとカッター、サークルチェンジ、カーブを覚えているだろ。」 「ああ、そうだな。」 「俺、勝負球がないだろ。直球以外。」 「まあ、そうだな。(変化球は結構覚えている方だけどね。)」 「俺、新しい変化球覚えたんだ。それもオリジナルさ。」 「へぇ〜、その名前は?」 「クロススクリューと言うんだ。」 「じゃあ、投げてくれ。と言うよりもよく編み出したな。」 俺はその時思った。それは左打者に食い込んで凡打にする球だと。 しかし、それはちがった。 「シュッパシーッ」「ウッなんだこれ。」 その球は切れ味が抜群、そして、球威と言い、スピードと言い、凄い。 そのスピードは149`変化球でも類を見ない速さだった。 「なあ、佑介、決め球これとストレートにしようぜ。勝央にだってこれなら勝つ。」 「ああ。」 これで勝央相手に三振を取れるかは分からないが、少なくとも武器にはできる、そう確信したのであった。 「プレイボール!」 先行はうちらだ。 「一番センター小川君」 小川「よし、まずは出てやる・・・」 田島「ふふふふふ・・・・。」 第一球:「シュッバシーッ」「ストライーク!」 小川「う、なにこれ!?速すぎるよ!」 第二球:「ストライクツー!」 第三球:「カキーンッ」「アウト!」 小川「ただいま。」一同「どうだった?」 小川「あれは速くて重い。重い球と言うよりも剛球だよあれは。」 次のバッターもそれは打てなかった。 ツーアウトランナーなし 「三番キャッチャー川口君」 俺「俺か・・・・・・・・。」 「三振になれ。」 「打つ絶対打つ。」 第一球:「ズバーン」「速すぎ!」 もちろんストライク。 スピードガンには157`と出ていた。 第二球:「ストライク!」 田島「ふふふふ、プロ級の速球なんて打てやしないはずだ。」 第三球:俺「打ってやる絶対打ってやる。」田島「雑魚キャッチャーを三振にしとめますか。」 「シュッ」「カキーンッ」 打ったーその打球は延びる延びる入るか!? 「ガッシャーン」「ワーワー」 ホームランホームラン! 俺「よっしゃーっ!」田島「ぇ、なんで?なんで雑魚キャッチャーにホームランを打たれるんだ?」 「四番ピッチャー柴田君」 俺「佑介。」 佑介「分かっている。」 第一球:「カキーンッ」 田島「ウッまたか!?」 浅井「させるかぁー。」 なんと浅井がダイビングキャッチ!! 「パシッ」「アウト!」 田島「ほ、ナイス。剛。」 いきなり先制した渉。しかし次の佑介が打った打球を浅井がダイビングキャッチ。観客を沸かせた。 この後何が起こるかは分からない。 渉&佑介「よーしみんな、しまっていこー!」 一同「オウッ!」