約束のウィニングボール(りょうた作) 「宏行君・・・絶対甲子園でも勝ってね。絶対ウィニングボールちょうだい・・・・・・・・・」 「美紀、美紀!!」 ・・・・そして俺の彼女は死んだ。 ・・・そう、俺には愛せる人がいなくなった。 優しい彼女に惹かれて俺は付き合い始めた。 楽しい日々だった。 しかし、彼女は元々心臓が弱かった。 あの時・・・・・・ 「宏行君、待って〜。」 タッタッタッタ・・・バタッ 「ぇ?っておい、美紀!?」 「まさか心臓発作でも起こしたんじゃないか?」 「救急車呼ばないと・・・・・・。」 プープープ 「あれ繋がらないって圏外だった。」 「もう仕方がない、病院まで急ぐぞ!!」 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ あの時は徐々に回復した。 時より病院の中で散歩したりもした。 その間にも俺は野球を頑張った。 その半年後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 突如心臓発作が起こった。 毎日毎日息苦しそうだった。 その時もお見舞いに行きながら、野球を頑張った。 愛するみきのために俺は、野球を頑張った。 「ストライーク!バッターアウト!ゲームセット!」 「よっしゃ〜!」 「ワーワー」 俺は昨日、甲子園出場を決めたばっかりだった。 でも、さっき・・・・・・ 「午後十一時九分、ご臨終です。」 死んでしまった・・・・・・・・。 ずっと何かを考えていた。 何だろう?美紀との思い出だったかもしれない。 「まあ、そう、へこむな。とにかくご飯、食べよう。」 父が言った。でも朝食はのどに通りそうではなかった。 あれ以来俺は自暴自棄になった。 あらゆる物を蹴ったり殴ったり今日もやるかもしれない・・・・・・・・・。 「くそっ・・・・・・くそっ!!」 俺は自分の拳を思いっきりぶつけようとしたら・・・・・・・・・ 「ちょっと待て、甲子園ですら、まだ一回も投げてないんだぞ。」 「明雄・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「宏行、お前、男のくせに、美紀ちゃんが死んだくらいで泣くな。」 「なんだと!?美紀が死んだぐらいで泣くな、だって!?」 「ああ。」 「ざけんな!?俺に取っちゃ、美紀が死んだってのは百倍悲しんだぞ!!」 「知らないよ。そんなの。」 「知らない?ふざけんな!!」 俺は明雄を殴ろうとしたその時・・・・・ 「まあ、抑えろ。それより美紀ちゃんは最期になんて言った?」 「へ?」 「だから、最期に美紀ちゃんは何を残して逝ったんだ?」 「宏行君・・・絶対勝ってね。絶対ウィニングボールちょうだい・・・・・・・・・って。」 「じゃあ、こりゃ野球、やるしかないか。」 「え・・・・あ、ああ・・・・。」 「美紀ちゃんのためにも、甲子園優勝を目指そう!!」 「あ、ああ(できんの?それ?)」 まもなく甲子園が始まる、さらにレベルUPを目指し、日々頑張るのであった・・・・・・ 「早く帰ろうよ・・・・・・・・。」 「ダメ。」 俺たちはあれから決勝まで進んでしまった。 今日はその決勝だ。 ビュン!! パシーッ ビュン!! パシーッ 「うん、いい調子だ。そのままで行けよ、宏行。」 「ありがとう、明雄。お前がいなければ、美紀がいなければ俺はここまで行かなかった。」 「そうか・・・・・。まあ、いい。今日は頑張ろうぜ!!」 「そうだな。頑張ろう!!」 今日の対戦相手は優勝候補の一つである神崎台高校だ。 神崎台高校は長野県のスキー場の近くにあるような寒い地域に位置していたが、独特の練習法を編み出し、2年前に春夏連覇も果たしていた。 「マ、マジかよ・・・・・・・・・・。」 「う、うへっ。」 「うちらの栄光も、ここで終わりか・・・・・・・。」 「せめて甲子園の土は持って帰ろうか・・・・・・・。」 「負けても、準優勝だからなぁ・・・・・・。」 などと俺や明雄を含むほとんどの部員が話していた、その時だった。 「戦いは、まだ終わっちゃいないよ、兄貴。」 「そうよ、相田君。雅行君の言う通りだわ。」 「その声は、雅行と桜庭さん!!」 雅行とは俺の弟、一年生だ。 「あの・・・・いつからいたの?」 「最初っからいたよ!!」 「ああ、ごめん。」 「で、なに?」 「兄貴、俺が野球をやり始めたのは明雄君や兄貴がいたお陰、そんな人たちが諦めていたら俺の野球人生は終わりなんだ。」 「私も野球が好きで小さい頃はリトルにもいたけど高校は女は野球できないでしょ?だからせめてマネージャーならやれるかな? っておもって野球部に入ったんだ。」 「だから、諦めないで。最後の夏ぐらい、全力で頑張ろうよ。」 「・・・・ありがとう。」 「みんな、ちょっときて。」 「?」 俺たちは円陣を組んだ。 「俺たち三年は最後の夏だ。最後の夏を楽しく過ごしたいんだ。負けてもいい、全力で行こう。」 「ハイッ!!センパイ!!」 「ウッオーーーーーーオウッ!!オウッ!!オウッ!!オウッ!!!」 うちらの先発は俺。 神崎台はエースの榊原、プロ注目の技巧派エースで左腕から投げるシンカーやシュートはいとも簡単にゴロを打たすことができるらしい。 そう言う俺も注目されている一人である。俺は150`ぐらい速球が出るので速球派である。 あと、好きなプロ野球選手の伝家の宝刀を真似たドロップや、俺の親父が高校、社会人でエースをやっていたときの武器だったスラーブを受け継ぎ、投げている。 これだけで、甲子園へと導いた。 しかし榊原のほうが能力的には上、微妙なところだ・・・・・・・。 それでも試合・・・いや戦いは始まった。 両方とも超高校級同士の先発、当然投手戦となった。 打撃自慢のうちらの打線も全く手が出なかった。 「ガキッ」 「チッ」 「アウト!!」 「ストライーク!!バッターアウト!!チェンジ!!」 「ナイスピッチだな、榊原。」 「有難う御座います。でも監督、相田と言う奴なかなかのものですよ。」 その間に俺は・・・・・・・・・・・・・・・・ 「シュッククッ」 「ブウンッ」 「パシーッ」 「ストライーク!!」 「なんだ、あのカーブは!?。」 「ゴウッ」 「ガキッ」 「ファール!!」 「くっ、速くて重い・・・、でも榊原と比べれば、まだまだだ!」 「シュッギュイーン!!」 「パシーッ」 「ストライーク!!バッターアウト!!」 「う・・・、さっきのカーブより曲がってた・・・・・。」 「ま、当然僕にはかなわないと思いますがね、変化球にかけては僕のほうが一級品です。」 「そうか・・・・・・・。」 さっき榊原がそう言ったとは言え、俺たちの高校は打撃自慢7回には明雄が特大の先制ホームランが出た。 そして俺は九回ツーアウトまで抑え遂に甲子園優勝目前となった。 「俺たちが神崎台に勝っている・・・。優勝できる!!」 「四番ピッチャー榊原君。」 「よし・・・・。」 「優勝まで後三球!!」 シュッ コツン 「ぇ」 ダダダダダダダ 「っく、マズい!」 シュッ パシーッ 「セーフ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 「まあ、大丈夫だろう。」 「よしっ」 俺は振りかぶり・・・・・・・投げたっ シュッ・・・グキッ 「痛っ」 痛みが突然走った。 予選からずっと投げていたという付けがたたったのだろう。 肩や肘にものすごい痛みが生じた。 球は大きくそれてしまった。 それはなんとか明雄がキャッチしたが、もう投げられるような体じゃなくなっていた。 「も・・もう一度。」 シュッ カキーン!! 「ウッ」 「ファール!」 「限界だ・・・」 「タイム」 明雄が俺の状態を察知したのか間合いを取った。 「どうした。」 「ウッ・・・肩も肘も・・」 「馬鹿野郎!お前、痛めたのか?」 「あ、ああ。」 「待ってろ。監督呼ぶ。」 監督が来た。 「馬鹿者!どうして言わなかった。」 「スイマセン。さっき痛めたんです。」 「仕方ない。控えを使う。前島!!」 「ぇ、あ、ハイッ!!」 「ま、待ってください。監督。俺を降ろすのなら、前島じゃなくて、雅行を使ってください。」 「何故だ。何故一年のお前の弟を使う?」 「アイツは・・・・地味だけどやるときはやってくれます。だから、お願いします。」 「前島。」 「いや、俺は雅行の方がいいと思います。俺は甲子園で投げるような資格はありません。」 「そうか・・・おい、雅行!」 「ハイッ」 「お前、投げろ。お前の兄が言ってるぞ。」 「ハイ、分かりました。」 「ピッチャー相田宏行君に変わりまして、相田雅行君。センター、相田雅行君に変わりまして、相田宏行君。」 「え、マサユキ使うの?」 「へぇ、一丁前に変えやがった。俺たち神崎台高校が勝つのに決まっているって神崎台のエースが言っているのに・・・。」 「兄貴が俺にチャンスをくれた。甲子園という大切な戦い。何としても勝たなければ!!」 ドクン・・ドクン・・ドクン・・・ドクッ 「うおおおおおおおおおおおおおお!!」 シュッ パシーッ 「ストライーク!!」 「クッ、前々から早いのは知っていたが、宏行と同じくらいスピードが出るじゃん。」 なるほど。 「どりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 グオン! パシーッ 「ストライクツー!」 「最後だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 カキーン!! 「何!?」 打球はセンター方向に伸びていく。ちょうど俺の所だ。 美紀が言っていたんだウイニングボールをくれって。 明雄や雅行、桜庭さんはは俺に勇気をくれた。 なのに俺だけ何にもできないなって・・・いやだ! 「うおおおおおおおおおおおおおお!!」 シュンシュンシュンシュン・・・パシーッ 俺はグラブの中にあるボールを確認した。 「アウト!!ゲームセット!」 1年後 俺はあれからスピヤーズにドラフト1位指名された。 1年目からストッパーとして活躍し、30セーブを揚げ、新人王になった。 これも、明雄や雅行、桜庭さんのお陰だ。 後天国にいる美紀にも感謝しなくてはならない。 ありがとう。 天国に届いているといいな。