私の思い出(ホッシー作) 季節は冬。 12月25日、街はクリスマスでにぎわっていた。 恋人達が寄り添い、甘いムードの中 とけてゆく・・・ 彼はその中にいた。 蒼井 良太。私の恋人。彼はいつも私の事を見ていてくれた。 毎日、見ていてくれていた。 私も彼の事を見ていた。 いいえ、今でも私は見ている。 でも、彼は今、私の事は見ていない。 だって、あの日から彼は私の知っている彼ではないのだから。 あの日といっても、今日と同じ日のクリスマス。 街もかわらず、クリスマスでにぎわっていた。 私達も他の恋人達と同じに手をつないでプレゼントを見ていて、甘いムードを作っては とけていた。 私の頭からはDragon Ashのmorrowの曲が流れていた。 だから私の手から伝わってくる彼の温もりを感じながら鼻歌で歌いながら歩いていた。 彼は私の鼻歌を聞いて、よく「恥ずかしいからやめれって。」と冗談まじりの顔で言ってくれた。 そして手に力を入れて笑っていた。 私も面白くなって力を入れて笑っていた。 そんなはしゃいでいる時に彼は私を連れて公園に行った。 彼が「ちょっとここで待ってて。」と言い、私をベンチに残す。 私は独りで寂しかったけど、ずっと待ってた。 30分ぐらいそこで待ってた。 この公園だけ、街に取り残されているような雰囲気だった。 どこを見ても明かりがなくて寂しい・・・ そんな時に、私は遠くで彼が来るのが見えた。 それと共に右からスピードが速い車がやってきていた。 ――――このまま彼が道路を渡ったらぶつかる。 私は本能でぴんと来た。 そして私は走り出した。めいいっぱい走って彼を止めようとした。 彼が道路に足を踏み入れていたとき、私はまだ5メートル先だった。 彼が道路の真ん中に来て、車にぶつかりそうになっても、私はあきらめなかった。 勢いよく飛んで彼を向こうの歩道につき飛ばした。 私はというと、そのまま車にぶつかった。 その車は一瞬、止まったけど・・・・逃げていった。 私は最後に彼が起き上がっている所を見て安心した。 でも、彼を突き飛ばした時に、彼は頭を強打していたせいで頭から血がでていた。 また倒れて病院に。私はずっと見守っていたけど、記憶喪失でいまだに記憶は戻っていない。 でも、クリスマスになると思い出してくれるのではないかとずっと待っていた。 それから私はこの公園のベンチで待っている。 あの時と同じ服、同じ髪型、同じ顔、同じ気持ちで。 ―――まだ、あの時の時間帯じゃないけど。 彼を見ていた。 今年も彼は独りだった。 去年も、その前の年もクリスマスは独りだった。 そして、街に行ってはすぐ帰る。 今の時間帯までいる時など、去年も、前の年もなかった。 公園のベンチは寂しい雰囲気に包み込まれている。 彼に・・・りょうくんに逢いたい。話したい。温もりを感じていたい。 私はずっとあの時の事ばっかを思い浮かべていた。 彼は結局、明日になっても来なかった。 「来年、来るかな。」 私は公園のベンチの上、ずっと来年の事で頭がいっぱいだった。