浪速のタコヤキ屋魂(太作) カキーン! 「やったー!」 「おっ、やっとるな」 「あー!やっちゃん!」 「タコヤキ1パックお願い!」 「オレも!」 「僕も!」 「あいよっ!」 『浪速のタコヤキ屋魂』 『タコヤキ屋』阿畑やすし。 (この地区のみで)言わずと知れた(この地区だけで)名タコヤキ屋だろう。 そよ風高校野球部でエースを張り、プロ球団極亜久やんきーズに入団。 中継ぎ・抑えのエースとして大活躍した男だ。 また、現在は少年野球チーム「南極亜久フェニックス」の週1臨時リリーフエースである。1イニングのみの登板が許されている。 ちなみに対戦相手はいつも「北極亜久フォックス」。 そのほかの時間はここ「極亜久河川敷公園」で屋台タコヤキ屋を経営。 妻・茜と2人で(なんとか)やっていっている。 ちなみに「アバタボール(その後アカネボールになる)」は今も健在だ。 変化量は完全に衰えたが、ランダム変化は残っている。 それから子供達から「やっちゃん」と呼んでいるのは阿畑が茜に「やっちゃん」と呼ばれたのを聞かれたからだ。 「よし、今日からワイは『やっちゃん』や!」そう、乗せられやすい阿畑。 「今日はこれを持ってきたで。『バナナタコヤキ』や!どや!味は!」 「うん、ビミョー」 「ホント、ビミョー」 「むむむっ、なら明日はすりりんごでも入れてみるか」 「やっちゃん、そんぐらいにしときー」 「なんや茜、売れたらどうするんや。暮らしも楽になってワイに感謝することになるかも知れへんやろ」 「はっは、そんなことありえへん」 「なんやとー!」 「「「「「アハハハハ!」」」」」 とまあこのように笑って過ごすのがいつものことなのだが。 事件は日曜日。 いつもの時間、いつもの格好、いつもの屋台、いつもの連れで公園に来たところ・・・ 「「「やっちゃん!」」」 「おう、今日もきたで。今日は約束通りすりりんご「そんな暇無いんだ!」 「なっ!なんかあったんか?」 「茜姉ちゃんも聞いてくれ!実は・・・」 「なにぃ!頑張スピードスターが試合を申し込んできたやと?」 「そうなんだ!なんであんな超強豪チームがうちみたいなところに・・・」 「とにかく行ってみるで!茜!店は頼んだで!」 「わかった!ウチに任せとき!」 カキイィーン! 「くっ!これで8-1だ!・・・あ!やっちゃんが来てくれた!」 「7点差!コールドの可能性あるやん!」 「やっちゃん!リリーフOK?  ・・・ただ、今3回だからロングリリーフになるけど」 「ええで!そのへんは浪速のタコヤキ屋魂で乗りきったる!」 「わかった!おーい!ピッチャー交代!阿畑やすし!」 「阿畑だって?あの極亜久のピッチャーやってたあいつか?」 「引退してから結構経ってる!もう50近いから大丈夫だ!」 「なんや、なめられとるがな。・・・後で痛い目見るで!」 「プレイ!」 (ここは直球だけでいくで。本気で行くから覚悟しいや!) びしゅっ! 「「「「「「「「「なにっ!」」」」」」」」」 バシイーン! 「ストライーク!」 「あれが引退して結構経った奴か?」 「もしかしたら息子のやすしかも・・・」 「にしてはヒゲ濃いけどな」 「てことは・・・」 「「「「「本物かよ!」」」」」 バシーン! 「ストライ-ク!バッターアウト!」 バアーン! 「ストライーク!バッターアウト!」 ドバーン! 「ストライーク!バッターアウト!チェンジ!」 「さすがやっちゃん!」 「元プロはすげえな!」 「でも大丈夫?全力だとヤバイと思うなぁ・・・」 「だいじょぶや!浪速の元エースをなめるんやないで!」 「よーし!やっちゃん!」 「なんや!」 「バッターボックス行きなさい!」 「阿畑さん、早く来てもらえますか」 「すんまへん、今行きまっせ」 「プレイ!」 (元プロがなんだ!よぼよぼ爺さんに打たれてたまるか!) ビュッ! 「なんや、棒球や」 ギイイィィン! 「わああああああああ!」 「ホームランだー!」 「・・・どや」 (うそだ・・・!オレが・・・爺さんに打たれるなんて・・・) 「おれもうつぞー!」 「せいぜい粘って来いよー」 しゅっ。 (え?ど真ん中の棒球・・・!) キイィン! 「ツーベースだ!僕も打つぞー!」 キンッ! 「行ってくるぜ!」 カキイン! 「オレも!」 カアァン!       ・       ・       ・ 「おっ、気がつけば勝ち越しとるがな」 「急に球がへぼくなったからなー」 「代わったのもたいしたことなかったからなー」 「よっしゃ、もう6回や。これと次で終わりや。気合入れていくで!」 「「「「「「「「おおっ!」」」」」」」」 ビシュ! パン! 「ボール!フォアボール!」 ビュ! キン! 「くっ・・・!」 (やっちゃん、急に打たれちゃった・・・。アカネボールもちょっとしか変化しないから棒球同然だ。  でも代わるピッチャーが・・・) 「なんやシケたツラして。ワイはまだまだいけるんやで」 「・・・じゃあ、その『浪速の根性』見せてください!」 「おう!」 (アカネボールや。本気でいくで) ビシュ! 「うわ!」 カキッ! グラッ! (バッターこけた!トリプルいくで!) パシッ! ビュッ! パン! 「すぐベース踏め!次セカンドや!セカンドはファーストにやれ!」 ビュッ! パン! ビュ! パシッ! 「アウト!チェンジ!」 「やった・・・!」 「トリプルだー!」 〜〜〜〜〜〜※三者凡退なので打撃省略。(ヒドッ)〜〜〜〜〜〜〜 「泣いても笑ってもこれがラストや。いくで!」 「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」 (口では大きい声出してるけど、相当な疲労のはず。体も痛いだろう) キンッ! 「くそ!」 パン! 「フォアボール!」 キン! 「満塁・・・」 「マズイ・・・」 「やっちゃん、代えるか?」 「やっちゃんはいけるよ!だって!」 「そや。ワイには・・・」 「「浪速のタコヤキ屋根性がある!」」 「よし!それにかけよう!いくぞ!」 「「「「「「「「おおっ!」」」」」」」」 「うらああああああ!」 (嘘だろ・・・これが) 「ストライクバッターアウト!」 「うおおおおおお!」 (バテバテおじさんの) 「ストライクバッターアウト!」 「てあああああああ!」 (投げる球かよっ!) 「ストライクバッターアウト!」 「「「「「「「「「やったー!」」」」」」」」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あれから1週間。 「そんな!」 「やっちゃん、引っ越すの?」 「本当?本当に本当なの?」 「悪い、本当や。・・・でも、アレだけは忘れるんやないで」 「うん!」 「よし!じゃあ大きな声で!」 「いっせーのーでー」 「「「浪速の魂ここにあり!」」」  おわり